行動的特徴に基づくタブレット端末・スマートフォン端末に適した所有者認証


近年、スマートフォン端末やタブレット端末がますます普及しており、 それらの端末には、個人情報や行動履歴などのプライバシー情報が蓄積されていることから、 それらの情報を保護するための認証システムが必要とされている。 現在、パスワード入力を用いた認証手法が一般的であるが、 長く複雑なパスワードを覚えなくてはならない、 小型の端末では入力自体が難しいなど、ユーザの負担が大きくなるという課題がある。

我々のグループでは、ユーザの負担を軽減可能な認証方法として、行動的特徴を用いた生体認証に着目している。 行動的特徴を用いた認証とは、指や腕の動き、歩容などのユーザが行う動作から個人の特徴(癖)を抽出し、認証に用いる手法である。 腕の動きを用いる際はパスワードを覚えるよりも簡単な動きでよく、 歩容などを用いる際は特定の動作を行う必要もなく、手軽な認証と言え、なりすましも難しいが、 他の認証法と比べ認証精度が悪いという問題がある。

そこでこの問題を解決するため、 分割最適化クラスタリングの導入により、最も本人らしくかつ他人と区別しやすいテンプレートを抽出する研究、 解剖学・運動学の知見を元に手指やその筋肉に着目し、 ユーザにとってタッチパネル上で行いやすいマルチタッチジェスチャを検討し、認証に適したジェスチャを検証する研究、 さらにはウェアラブル端末から得られる情報と組み合わせるマルチモーダル認証の開発などを検討している。


テンプレート更新による認証システムの全体像
行動的特徴の例:腕を回す 行動的特徴の例:腕で123を描く





プライバシーの保護とデータの利活用を両立した匿名化処理


ビッグデータビジネスに代表されるように、 ユーザから収集したデータに対して、ユーザのプライバシーを保護しつつ、そのデータを活用する研究が数多く行われている。 我々のグループでは、個人データの開示と、開示から個人が利得を得られる情報基盤HIFIを提唱している。 この情報基盤ではセンシングによって収集された個人データをプライバシー保護して開示することにより、 フィールド内に登録された個人は、開示した個人データに応じた利得として、フィールドに応じた上質なサービスや有益な情報を得ることができる。

上記のような個人データを開示し、開示された情報に応じて利得を得るシステムを考えた場合、 利得を得るために適したプライバシー保護(データの匿名化)を実施する必要がある。 しかし、既存のプライバシ―保護の研究では、匿名化によるデータの情報損失の度合いから匿名化データが作成されており、 必ずしも利活用に適した匿名化データが作成されているとはいえない。 本研究の目的は、利活用としてユーザへの情報推薦を想定し、 推薦情報を基に利活用を考慮したプライバシー保護処理を実現することである。


推薦情報を考慮した匿名化処理システムの全体像





動的シーンに対する映像改ざん検出


コンピュータの発展に伴い、Inpaintと呼ばれる物体・前景除去を用いた映像の自動/半自動改ざん技術が出現してきた。 市販ソフトやOpenCV等のライブラリを用いた高速な処理、さらには動的な撮影視点や背景を持つ映像の高精度なInpaintが可能となり、 それらの技術を悪用した改ざん映像による被害が今後懸念される。 そこで、映像改ざん検出手法の開発に多くの研究者が取り組んでいる。 本研究では、 多様な映像におけるInpaintなどの高度な「空間的」改ざんを対象とする、事前のメディア保護処理を必要としない 「空間的映像改ざんの受動的検出」を目標とする。


空間的映像改ざん検出システムの概要





多重暗号化と確率的動作選択に基づく匿名通信方式3-Mode Net


通信時において、通信内容はSSLなどの暗号化プロトコルを用いて秘匿できるが、 通信者(送信者、受信者)は、送受信者のIPアドレスがIPパケットのヘッダに記述されるため、秘匿することができない。 そのため、IPパケットのヘッダを見ることにより送受信者の関係や趣味、嗜好などが知られ、プライバシーが守られない可能性がある。 そこで、送受信者を秘匿する匿名通信の研究がこれまでに多くなされている。

我々の研究グループでは、既存の匿名通信方式であるCrowdsとOnion Routingの特徴を生かした匿名通信方式である、 3-Mode Net(3MN)と呼ばれる匿名通信方式に関する研究を行っている。 3MNは、多重暗号化されたメッセージを、複数の中継ノードを介して転送する匿名通信方式である。 中継ノードは、Dモード(宛先に転送後、復号化)、Tモード(転送のみ)、 Eモード(多重暗号化処理により宛先を変更後、転送)の3つのモードの中から確率的に動作を選択する。 このEモードの導入により、送受信者双方の匿名性を確保することが可能である。

3MNの問題点として、各モードを選択する確率の与え方によっては、 メッセージが届くまでに通過する中継ノード数が著しく大きくなるという問題が指摘されている。 この問題を解決する方法として、現在、非復元抽出の概念を導入する手法や、セキュア・マルチパーティ計算を用いた手法を検討している。


3-Mode Net

研究テーマ一覧