音響電子透かしを利用した映画の盗撮位置推定


近年、映画の海賊版による著作権の侵害が深刻な問題となっており、 Motion Picture Association of Americaの報告によれば、その損害額は年間61億ドルにのぼる。 これらの海賊版のうち、映画の公開直後に流通するものの多くは、映画館にビデオカメラを持ち込み、 上映中の映画を撮影する映画の盗撮によるものである。 映画の盗撮は多くの国において法的に禁止されており、この問題に対する対策が喫緊の課題である。

この研究では、音響電子透かしを用いたビデオカメラの位置推定システムを提案する。 提案システムでは、映画のサウンドトラックの各チャネルに埋め込まれた電子透かしの空中伝播時における変化のモデルを構築し、 このモデルに基づいて位置を推定する。 提案システムでは、映画の盗撮が長時間同じ場所で行われることに着目し、 確率統計的な手法により高い精度での位置推定を実現する。 また、3台以上のスピーカを持つ映画館であれば既存の設備を変更することなく利用可能である。 提案システムは、映画の盗撮への強力な抑止力となることが期待される。


音響電子透かしを利用した映画の盗撮位置推定





音響電子透かしを利用したリアルタイム位置推定


本研究では、ナビゲーションに代表される位置情報サービスへの応用を目指し、 屋内環境を対象とした音響電子透かしを用いたリアルタイム位置推定システムを提案する。 提案システムでは、環境中に設置された複数のスピーカから出力される電子透かしが埋め込まれた 音楽を、ユーザの持つモバイル端末で受信し、空中伝搬後の音響電子透かしの変化のモデルを利用して位置を推定する。 リアルタイムでの位置推定の実現のためには、映画の盗撮位置推定とは異なり、 長時間同じ場所で音響信号が受信されることを仮定できないため、 音響電子透かしの変化のモデルをより現実に即したものに拡張し、さらに粒子フィルタを導入することで位置推定精度の向上を図る。






情報ハイディング技術を用いた可逆型プライバシー保護画像処理


サーベイランス映像をインターネットを介して伝送する際、 被写体領域に適切な画像処理を施すことにより被写体のプライバシーを保護する必要があるが、 犯罪捜査への利用や遠隔からの見守りを想定した場合、特定の人物に対する実映像の復元も考慮した技術が必要となる。 このような復元可能なプライバシー保護処理のことを、可逆型プライバシー保護画像処理と呼ぶ。

可逆型プライバシー保護画像処理を実現する方法として、 我々の研究グループでは情報ハイディング技術と離散ウェーブレット変換を併用した手法を提案している。 ウェーブレット変換を適用すると、画像は低解像度成分と高解像度成分に分解される。 低解像度成分の画像を元の大きさまで拡大することにより、モザイクのかかったようなプライバシー保護画像を生成することができる。 このプライバシー保護画像に対し、高解像度成分を情報ハイディング技術を用いて埋め込むことによって、閲覧権限を持つ者だけがそれを抽出して元の画像を復元できる。


情報ハイディング技術を用いた可逆型プライバシー保護画像処理


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